夢をもち自ら行動できる子どもに

               笠井 修

今年度の全国学習状況調査の児童質問「将来の夢や目標を持っていますか?」に対して、本校の児童が当てはまると回答した割合は73%でした。全国、島根県に対してやや低めです。今年の5月に産業省が発表した「未来人材ビジョン」のデータによると、18歳未満で「将来の夢を持っている」と答えた子どもが日本は60%しかいなかったそうです。他国は80~90%を超えています。また、他のデータでは、「社会人になると勉強しない人」の割合が日本では46%であり、これは他国と比べても非常に高いです。つまり、他国では多くの社会人が「学び続けている」のです。

日本の『夢を持てない子ども』と、『学校を卒業すると勉強しなくなる大人』、何かをやってみようと挑戦するエネルギーがどこかで取られているのではないかとジャーナリストの野沢優子さんが指摘しています。野沢さんがある中学校で講演をしたときに、生徒から次のような質問が出たそうです。「失敗すると周囲からいろいろ言われるし、自分が未熟だと落ち込む。立ち直るにはどうしたらいいか?」これに対して、野沢さんは「人は皆失敗して成長する。未熟だということはその分、伸びしろが沢山あることだよ。」と答えたそうです。生徒は「未熟って悪いことじゃないですね。」と笑顔で言ったそうです。

 子どもを制圧する指導は、教育やスポーツの現場に今でもあります。子どもたちの意見や気持ちを聞かずに、一方的に指示命令する。そうやって子どもたちが発奮することを期待するのでしょう。しかし、ある研究で、算数のテストをやる前に誉め言葉を受けたグループと、否定されたグループでは、前者の方が成績が良かったそうです。誰かに否定されたり、怒られたりすると脳の神経の動きが鈍くなり、大人が抑圧すればするほど、脳は無気力になり意欲的に動くことはなくなるのだそうです。そうはいっても、学習で怒られながら勉強した子どもが一時的に成績をあげたり、スポーツの中で指導者に怒鳴られて練習する選手のパフォーマンスが上がったりすることはあります。結果がすぐに出て即効性が高いため、この方法は長く使われてきました。しかし、これを続けていると間違いやミスを許さない弊害がでてきます。失敗を恐れる・自信がない・自己否定をする感覚は、無気力化につながります。

 昨年放送されたドラマ「ドラゴン桜2」で、主人公の桜木健二さんは生徒に次のように話しています。「試験の問題には、正解は一つしかない。たどりつけなければ不合格だ。人生は違う。人生には正解はいくつもある。大学に進学するのも正解、行かないのも正解だ。スポーツに夢中になるのも、音楽に夢中になるのも、友達ととことん遊びつくすのも、誰かのためにあえて遠回りするのもすべて正解だ。だから、お前たち、生きることに憶病になるな。」と。

日本の子どもは「夢」を将来の職業やスポーツの勝利などを達成しなければならない目標としか見ていないのかもしれません。もっと、楽しみや興味、好きなことなど自由にとらえ、自分らしく生きていくことにつなげてほしいと思います。夢があれば、それがパワーとなり、主体的に動き出すことができます。失敗をゆるされる環境の中で、いろいろな経験を積みながら"やりぬく力"(やり遂げる、しなやかに向き合う、立ち直る)力を育成したいと思います。